天然素材の布地に美しい藍色が乗る、沖縄の伝統工芸「琉球藍染め」とは!?
藍染は濃紺の上品な色合いが美しく、多くの人に好まれる染め物です。日本全国で藍染めは存在していますが、沖縄県の伝統工芸の一つである琉球藍は、本土の藍染と種類が異なると知っていましたか。どんな歴史があるのか、具体的な特徴および製作工程などを理解しておくと、土産として買う時や、誰かにプレゼントする時の参考にしやすいです。
「琉球藍染め」の歴史は琉球王朝時代にさかのぼる
実は琉球紅型と琉球藍染めの元々のルーツは同じものです。14世紀から15世紀の琉球王朝時代にまでさかのぼりますが、紅型は王族や士族が礼装として着用した物で、琉球藍染めは藍型と呼ばれ、庶民の着物として使用されていました。
日本をはじめとした東アジア諸国と貿易していた琉球王朝時代に、紅型や藍染めは外来文化の影響を吸収しながら独自の織物へと発展していきました。島に自生する植物染料や素材を生かした布作りは、創意工夫を繰り返し他では見られることのない美しい染織物を生み出しています。琉球王朝の保護のもと、江戸幕府や中国などに献上される素晴らしい作品が多数ありました。
17世紀初頭、薩摩藩によって琉球は侵略され、薩摩藩の支配下に入りました。財政難だった薩摩藩では、琉球に対し人頭税と呼ばれる厳しい税を課しています。一部の地域の税金は、米や粟の代わりに反物に変えて納めるよう義務付けられました。過酷な人頭税の苦しみの中、技術を高め、高い品質の染織物を納めています。人頭税が1903年に廃止されたのち、第二次大戦によって紅型など様々な物が被害に遭いました。戦後多くの人の手によって復興し、現在に伝えられています。
天然素材の布地が良く染まる「琉球藍染め」の特徴とは!?
琉球藍染めの原料となる琉球藍は、本土での藍染の原料となる蓼藍や、インド藍とは異なるキツネノマゴ科の多年草植物です。東南アジアの原産で、日本では沖縄県北部で栽培されています。染め上がりの色は蓼藍で染めた物よりも赤みが強いのが特徴で、染めた布によっては夜明けの空に似た、わずかに紫がかった色となることも少なくありません。手作業で1枚1枚染めており、化学染料では決して出すことができない独特の印象を与えます。天然素材の布地に良く染まり、染めた布は消臭や防虫効果への期待が高いです。沖縄では藍畑や琉球藍染めをしている工房に、ハブが寄り付かないという説もあります。
独特な色合いの琉球藍染めの制作工程とは!?
本土ではスクモと呼ばれる、発酵した藍の葉を使って染めます。それに対して一般的な琉球藍染めは、琉球藍を発酵させて石灰を加え、藍の成分を沈殿させて上澄み液を取り除いた泥藍(でいあい)を建ててから染める形です。工房ごとに泥藍の建て方は異なりますが、泥藍に泡盛などを加えて染液に変化させることを「泥藍を建てる」といいます。藍花と呼ばれる泡状の物が表面に盛り上がっていれば建った状態です。
泥藍が建ったら生地を藍の中に入れ、繊維の中までしっかり色素が入るようにもみ込みます。もみ込む時間や回数によって色合いは調整可能です。工房によって、グラデーションや型染めなどを行うところも多いといいます。
布を引き上げると最初は緑色ですが、空気に触れて藍色に変化していきます。空気に触れて色が変わるのは酸化による作用です。イメージした色になったら布を水洗いして乾燥させ、最後に色留めをしてからさらに乾燥させます。工房によって色留めに使う物は異なり、それぞれ独自の物を使用していることが多いです。
伝統的な美しさを今に伝える「琉球藍染め」
琉球藍染めは歴史的な苦労を乗り越えて、現在のような美しい染め物となりました。琉球独自の染料を使って作られた物は、本土の藍染にはない、上品なあでやかさを持つものばかりです。衣類だけでなく財布や帽子などの小物もあるため、土産を買う時の参考にするといいでしょう。