沖縄を代表する伝統工芸品壺屋焼の歴史と完成までの制作工程
沖縄県には琉球王朝時代から受け継がれている伝統的な儀式や工芸品が数多くあります。例えば、食器や火鉢など一般家庭で日常的に使用されている壺屋焼もその一つです。壺屋焼はいくつかの種類に分かれていて、それぞれに特徴や用途が異なります。今回の記事は壺屋焼の起源とされる高麗瓦との関係、使用する材料や作業工程についてです。
壺屋焼の特徴と歴史
壺屋焼は沖縄県那覇市にある壺屋で作られている陶器のことを言います。焼物と書いてやちむんと読む沖縄の方言でも親しまれている壺屋焼は絵付けに釉薬が使われているのが特徴です。陶器に対して高価な美術品のイメージを抱く人もいますが、壺屋焼は古くから食器や急須として使われるなど一般の人にも親しまれています。壺屋焼は14世紀から16世紀の間に中国大陸からもたらされた高麗瓦が起源という説が有力です。
15世紀前後の琉球王国時代は、隣接する中国や東アジアの諸国との交易が盛んだったと考えられています。壺屋焼の一つとされる荒焼の技術も同時期に持ち込まれたものです。江戸幕府の薩摩藩の支配下となった17世紀以降は海外との交易が規制されるようになり、時の琉球王が朝鮮から陶工を呼び寄せたと言われています。この陶工の技術によって作られたのが壺屋焼の元とされる上焼です。その後、安価な焼物が大量生産されるようになり壺屋焼の人気は下火になりましたが、大正時代以降の民芸運動をきっかけに再び価値が見直されています。
制作に至るまでの工程
焼物で最初に行うのが土の採掘と練り作業で、壺屋焼制作は島尻マージと白土の2種類を採掘して練る所から始めなくてはいけません。専用の土練機が開発されるまでは練る作業を全て人の手で行っていたため、土練り工程だけで数日程度掛かったと言われています。土練りが完了したら次の行うのが成形と化粧がけです。一般的な焼物と同じようにろくろを使って器や壺の形に整えていきます。沖縄の守り神として親しまれているシーサーなどの置物ではろくろが使用できません。昔ながら手びねりと言われる技法で作ります。化粧がけはナブーと呼ばれる化粧土で表面を覆う作業です。
化粧がけが完了したら釉薬を掛けて焼物に艶を出して焼成します。陶器は多くが二度焼で作られるのに対して、壺屋焼は一度だけです。回数が少ない分、1回の焼きは10時間以上掛かるため、火を絶やさないように燃やし続けなければいけません。
市販されている焼物の種類
沖縄で販売されている壺屋焼は大きく荒焼、上焼、アカムヌーの3種類です。上焼は釉薬を掛けて1200度の高温で焼いた施釉陶器で、食器などの日用品として愛用されています。アカムヌーは土にニービと呼ばれる砂岩を混ぜ600度で焼き上げた陶器です。耐火性能に優れているのでやかん、火鉢として使われています。そして、荒焼は沖縄南部で取れる粘土で作られた陶器で、主な使用方法は貯蔵用の壺、甕などです。
様々な商品を見比べて自分のお気に入りを見つける
食器や保存用の壺など日常的に使用されている壺屋焼は観光地を始め、県内の色々な場所で購入することはできます。初めて購入する旅行者の中にはどれを選んでも同じと誤った認識を持っている人も少なくありません。陶器などの焼物は作り手の個性が形として現れる工芸品です。一見同じように見えても作家によってそれぞれ個性が違うので、自分のお気に入りを見つけるためには複数のお店に足を運ぶ必要があります。